04年。「快速登山」開始時に、上高地より穂高〜槍の3000mの稜線に挑んで以来、穂岳連峰に入っていなかった。当時はデジカメを持っておらず、撮りきりの簡易カメラで撮影を行ったのでHP上にも穂高の写真がない・・・。
5時30分。2年ぶりに上高地バスターミナル到着した。
穂高連峰は雲をまとっているが、雲に光が差し込み幻想的な雰囲気である。 |
梓川沿いを河童橋に向かう。光の反射が美しい・・・。
うお〜!マズ登攀する前穂高岳の山頂が雲間から出ている。天気はマアマアそうである。 |
河童橋から穂高連峰を望む・・・。奥穂高岳の山頂は雲の中・・・ |
この時間、河童橋には誰もいない。
気合を入れてスタートを切った。橋を渡り「岳沢登山路」入り口へ向かい走り始める。 |
穂高・岳沢登山路入り口。
岳沢ヒュッテは雪崩でやられ、「閉鎖」の表示がされていた。 |
始まった。岳沢ヒュッテ跡までの登山道の下部は、比較的なだらかで飛ばすことができる。 |
振り返ると、六百山(2450m)が見える。
岳沢ヒュッテ跡の標高が2180mなので、高度を確認するには都合の良いピークである。 |
しばらくは、うっそうとした樹林帯の中を進む。
明神岳側のつづら折の道を登ってゆく・・・。 |
このように「道標」もしっかりついている。 |
登山道の整備も素晴らしく、非常に登りやすい道が続く。 |
前明神沢のガレ場を横切ってさらに登ると、いよいよ岳沢のガレ場に出る。 |
ガレ場の左サイドの樹林の中を登る。この辺から次第に傾斜がきつくなってくる。
ここの道標は「NO.6」と表示されているが、「NO.0」の地点が岳沢ヒュッテ跡である。 |
西穂高岳の斜面に光が当たる・・・。 |
高度が上がるにつれ、だんだんアルプスらしい雰囲気が満ち満ちてくる・・・。 |
いよいよ岳沢が近づいてきた。 |
一度沢に下りて岳沢ヒュッテ跡にトラバースしてゆく。 |
吊尾根下部の幽谷の沢から雪渓がつらなってきている。 |
上高地がずいぶん下になった。 |
上高地より1:15:20で岳沢に到達。マアマアか・・・。 |
雪崩で潰れた岳沢ヒュッテは跡形もなかった。
大きな土塁が残るのみ。今年はすべての営業を停止し、復興の予定もいまだたっていない。素晴らしい登山道を守るためにも再建を祈りたい。 |
目指す前穂高岳の稜線上から光が差し込んだ。 |
岳沢ヒュッテ跡から上高地を俯瞰する。 |
さあっ、岳沢を出発しいよいよ重太郎新道に突入である。
岳沢から前穂高岳山頂まで高度約900mを突き上げる、非常に急峻な、そしてアルペン的な素晴らしいダイレクトルートである。 |
マズはカモシカの立場まで、草付のジグザグの急登を飛ばしてゆく。 |
岳沢がもうあんなに下になった。 |
右手には奥明神沢にべったり張り付いた雪渓が見える。
やはりまだ7月上旬、雪の残り方が多い・・・。 |
草付の急坂の斜面にはダケカンバの森が広がっている。 |
・・・と、 誰かが追いかけてくる。私に追いついてくる者は初めてだ。
岳沢ヒュッテ跡であった若い青年であった。私が先行していたが追いついてきたのである。やるなっ、おぬし!ペースがあったので一緒に行くことにした。2人で行動するのは快速登山を開始してから初めてである。 |
かなりの長さを誇るハシゴ。ナカナカの迫力である。 |
上から見るとこんな感じ・・・。岳沢をバックに高度感抜群! |
カモシカの立場に立つ。
天狗のコル、西穂高岳方面はガスがかかっている。 |
カモシカの立場からさらに高みを目指す。急斜面に根をおろすダケカンバの森と扇沢下部の岩壁、コブ尾根の距離感が抜群の高度感を感じさせる。若者はしっかりついてくる。 |
ガケカンバの向こうに奥明神沢上部の雪渓。 |
さらにハジゴのかかる急登を進んでゆく。
高度をグングン稼ぐことができる。 |
ハイマツ帯を抜けると一気に展望が開ける。ここは雷鳥広場。奥穂高岳はスッカリ雲をかぶっているが、その南稜の岩壁から穂高岳の鋭利さが伝わってくる・・・。 |
雷鳥広場から稜線まで最後の急登が始まる。まだまだ厳しい登りが続く。 |
スラブ状の岩場の急登が連続する。高度感溢れるアルペン的な登りだ。緊張感もあるが、これがアルプス、気持ちいい・・・。 |
迫力のある景観が豪快に展開する緊張感溢れる登りが続く。もうすぐ紀美子平である。 |
紀美子平到達!3:00:14でこなした。 |
紀美子平から前穂高岳への登り。豪快な岩稜を登攀する。穂高は岩の塊である。 |
前穂の登りより奥穂高岳方面を望む。残念ながら雲の中・・・。 |
頂上直下から岳沢を見下ろす。 |
頂上に出た!お〜っ、サミットにまだ多くの雪が残っている。 |
前穂高岳(3090m)山頂。3:36:07で到達した。
残念ながら雲の中である。 |
奥又白谷方面のガスが切れた。この先は前穂高岳の東壁、すっぱり切れ落ちている。眼下には徳沢付近を流れる梓川。高度差約1500mのすばらしい高度感。 |
こちらは前穂高北尾根。手前から雲を抱く2峰、3峰。最後は8峰まで続く。 |
山頂から再び岩稜下ると紀美子平が見えてきた。 |
紀美子平からは明神岳1峰(2931m)、2峰が雲間に見えた。 |
さあっ、紀美子平を後にし、通称「吊尾根」を奥穂高岳へ向かう。 |
約5〜6分進むと・・・。
「うおっ〜!こっ、これは・・・」。登山道が急峻な雪渓で寸断されている。 |
下部を覗き込むと・・・。これはもの凄い傾斜だ。スリップしたら奈落の底へ落ちてゆく。 |
上はどうだ・・・。
うあっ〜・・・。これは相当上まで雪が着いている。高巻きするにしても危険きわまりない。 |
雪渓の下部を調査に急斜面を下ってゆく。
「オ〜イ!来てみろよ〜!」、若者を呼びよせる。彼も下ってきた・・・。 |
一緒に覗いてみた。左からももう一つの雪渓が合流し、見えないほど下まで続いてゆく。トラバースできそうなところはまったくない。 |
残念ながらここまで・・・。
スリップしたら確実に奈落に落ちてゆく。そしてスリップする確率はこの靴では100パーセント。死あるのみ!アイゼン、ピッケルなしに通過は不可能であった。高巻きは可能だが岩登りのリスクと多大な時間がかかる。この向こうに同じような雪渓があったら進退きわまる。 |
撤退である。ガスは突然切れ、雪渓の向こうに上高地が見えたのは「帰って来い」と山の神様が言っているようであった。
★画像にマウスを置くと画像が切り替わります。 |
紀美子平にもどり下山開始。
紀美子平直下の一枚岩を長い鎖を使いながら下降してゆく。まさかまたここを下るとは思わなかった・・・。 |
下山中に先ほどの雪渓を確認してみた。
「あれだ・・・」。やはり良かった。隠れてはいるが、向こう隣にさらに大きな雪渓がある。高巻きしなくて良かった。 |
雷鳥広場に帰還した。ガス間から明神岳の鋭鋒が見える。
途中から一緒に行動してきた若者を紹介しよう。春先から上高地の某ホテルでアルバイトをしているK川君。8月いっぱい働くという。休日を利用して穂高にチャレンジしたそうだ。サッカーで鍛えたそうで持久力抜群。しかし、ユキチに追いついてくるとはナカナカやる・・・。 |
重太郎新道の下りは豪快。高度感抜群だ。 |
2505m、岳沢パノラマ地点付近に帰還。
素晴らしい穂高の岩稜の山旅もこのへんで終了である。 |
南稜から滝沢に切れ落ちてくる大岩壁は凄い迫力である。 |
ここからは、のんびり花を撮影しながら下る。
これは「コイワカガミ(小岩鏡)」。6〜7月に花をつける。 |
ハイマツ帯の中に「ハクサンイチゲ(白山一花)」 |
信州に多いので名がついた「シナノキンバイ(信濃金梅)」の黄色い花 |
白い可憐な花「イワツメクサ(岩爪草)」。
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上高地が眼下にハッキリと見えてきた。霞沢岳(2646m)の堂々とした山容が素晴らしい。この山は近いうち必ず登るつもりだ。
★画像にマウスを置くと画像が切り替わります。 |
カモシカの立場接近。岳沢、上高地が良く見える。 |
ふりかえればハイマツ帯の上に前穂高岳の岩稜。 |
K川クンと岳沢に帰還した。
ここの雪渓も大きく残っているが、吊尾根にあんなに大きいのが架かっているとは・・・。やはり7月上旬は穂高にはピッケル、アイゼンは必修なのかも。 |
上高地に向け下降する。
もう走って飛ばすことはなく、歩きで下ってゆく。 |
六百山が目の前に・・・。
もう少しだ。 |
樹林帯の中を下ってゆくと、岳沢名物「天然クーラー」の横に出た。 |
風穴なのだ。穴の中を覗いてみると・・・。
お〜っ・・・。穴の中にタップリ雪が残っている。 |
涼しい〜!これは気持ちいい!
真夏なのに岩の間から冷気が吹き出し、汗をかいた身体にはメチャ気持ちよい。 |
岳沢登山道入り口に到達。
林道に出て河童橋に向かっていると猿たちがたくさん出てきた。まったく逃げない。 |
河童橋付近に帰還。梓川の水辺に降りてみる。奥穂高岳には相変わらず雲がかかっていた。 |
河童橋に帰還。
うわ〜っ、観光客でいっぱいだ・・・。 |
ホテル白樺荘前のテラスもいっぱいの人・・・。 |
河童橋の上もこのとおり・・・。
この時間(午後2時頃)に河童橋にいたことがなかったが、やはり上高地は凄い人気の観光地なのだ。再認識した。 |
橋を渡り、五千尺ホテル前も大変な賑わいようである。 |
ホテル前のテーブルでK川君と乾杯!ビールをご馳走してあげた。う〜ん、うまし!
聞けばK川クンは我が息子とほとんど同じ年だった。親父と息子で登ったという感じか・・・。う〜む、なんとも変な感じ。アルバイト中にどうやら彼女もできた模様。これからTOPシーズンで忙しいが、8月まで楽しく働いてくれい! |
河童橋5千尺ホテル前のベンチで、結局ビール2リットルを飲んでしまった。すっかりいい気持ちである。
本日の宿は「徳沢園」。歩くと2時間かかる。もう酔っ払っていて当然は走れない。もうゆっくり散歩だ。小梨平の中を流れる清流沿いに歩いてゆく・・・。 |
清水橋を通過・・・。 |
小川には物凄く透明で清らかな清流が流れている。イワナが生息できるわけだ。 |
左手には明神岳が覆いかぶさるように聳えている。今日はあの遥か上まで行ってきたワケだ。 |
気持ちよい梓川街道の林道を奥地に向かう。
この時間になるとこの方面は人もまばらである。いつもは走っているので時間の経過がゆったりとして落ち着ける。 |
明神岳の下部の鋭鋒が光を浴びている。 |
前方の見通しが効きだしてきた・・・。
梓川の支流が左手に流れ出す。 |
すると程なく明神に到達。明神館が見えてきた。 |
明神館前に到着。
ここは穂高神社奥宮の参道入り口にもあたる。2年前に徳本峠越えをした時、宿泊したことがある。 |
あと徳沢まで3.4Kか・・・。歩くと遠いなあ〜・・・。 |
人はまったくいなくなった。
静寂の森の中をゆ〜くりとひとり歩いてゆく。こういうのもナカナカいい・・・。 |
上高地方面ををふりかえると、梓川の清流が逆光に輝いていた。 |
前方の視界が開け蝶ヶ岳、常念岳が青空の下に現れた。徳沢は正面の森の中である。もう少しだ・・・。
★画像にマウスを置くと画像が切り替わります。 |
いよいよ徳沢へ通じる森の中へ入ってゆく。 |
氷壁の宿「徳沢園」。遂に道標が出た。 |
徳沢到着!昭和初期までは牧草地であった。今は草原となりキャンプ場になっている。 |
もう午後5時ちかい。
夕食時の一日の終わりを向かえ、キャンプサイトには穏やかで和やかなムードが漂っている。 |
氷壁の宿「徳沢園」。
井上靖の小説「氷壁」の舞台となった宿である。 |
ここにはいつか泊まってみたかったのである。
本来であれば今日は、前穂、奥穂、北穂と穂高連峰を走り、涸沢から下山してくる予定であった。が、ナント、上高地から酔っ払いながら来てしまった。 |
お〜っ・・・、館内はさすがの造りである。
エントランスの受付からしてこんな感じ・・・。豪華な、豪華な山小屋である。 |
階段もシャトー風でカッコイイ・・・。 |
ベランダもいいね〜・・・。
ベランダからキャンプ場を望む。 |
ベランダから山を眺めるのもいいね〜・・・。 |
個室などは必要ないので相部屋に宿泊した。
ホホ〜ッ、ここか・・・。大変きれいなで清潔な室内だ。 |
6番の下のブースを与えてもらった。雑魚寝ではなく、ひとりワン・ボックスの寝床なのでホッとする。よく寝られそうだ! |
荷物を置いて、早速、お風呂に行く。
「信濃白炭の湯」と書かれている。ほほっ〜・・・。これは山小屋としてはナカナカのお風呂だ。 |
信州・安曇野の天然の広葉樹(コナラ・クヌギ)を焼き上げた希少な炭を浴槽内に使用している。
天然の入浴剤を使用した素晴らしいお風呂であった。 |
窓を全開すれば明神から前穂高岳の山並みが・・・。
露天風呂感覚でゆったり入ることができ、疲れを癒すことができた。 |
食事の時間となり、宿泊者全員が食堂へ・・・。 |
大きな薪ストーブがある快適な食堂であった。 |
ステーキが出た。イワナの塩焼きもついている。
山小屋としてはかなりハイレバルなメニュー。いつものように御飯大盛3杯、しっかり食べさせていただいた。個室に宿泊されている方には、もう一品サブメインディッシュが出ていた。 |
さっ、外にでてもう一杯ビール!
ラッキーなことにクラッシック・ラガーが売っていた。この苦さは最高。 |
乾杯!〜
雪渓に阻まれ、予定の行動は取れなかったが、たまにはこういうスローな山旅もいいもんだ。徳沢園に泊まることもできたし・・・。 |
明神岳〜前穂高岳が夕日を浴びている。徳沢のキャンプ場は静かに暮れてゆく・・・。
この続きはこちらです↓ 【7月13日(日)】 |