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第5回 浅草 「ち ん や」老舗秘伝のすき焼

 達人とゆくグルメ紀行。第5回目の食材は「すき焼」。そして達人が選んだお店は「浅草 ちんや」。このお店は明治13年創業で、同36年よりすき焼の専門店となり、文明開化とともに始まった「牛肉」を食べる習慣を「牛鍋」から「すき焼」へと発展させた老舗中の老舗である。
  
 この老舗の秘伝の「味」をわれわれに紹介すべく達人が選定されたのである。

いや〜、楽しみである。ユキチはどちらかといえば魚介類よりは肉類のほうが好きだし、すき焼はいろいろ食べた。ニューヨークの某超高級日本料理店で食べた「すき焼」があまりのおいしさに記憶に残っているが・・・。

 果たして老舗の「味」やいかに・・・。

高まる期待を胸に雪の降る中、浅草・雷門へと向かう。


■ すき焼 ちんや
  台東区浅草1−3−4
  03-3841-0010
  平日/土 12:00〜21:00
  日/祭日 11:30〜21:00
  火曜定休

■ 最寄駅
  東京メトロ銀座線浅草駅
   出口1より 徒歩4分
  都営地下鉄浅草線浅草駅
   A4より  徒歩3分


 

実況中継

   浅草到着!浅草というところは、上州人のユキチにとっては東京の玄関口であった。東武伊勢崎線の上り最終駅がココ、浅草駅である。松屋浅草店の中にある。懐かしい・・・。
 駅から徒歩ワズカ1分。神谷バーがある。ここは学生時代、父親に初めて連れてきてもらった。あの時、しこたま飲ませてもらい、実家にに帰る父親を酔っ払いながら見送った記憶が鮮明に残っている。

 

 神谷バーの売店があった。

 これがかの有名な「電気ブラン」。明治時代に誕生したブランデーベースのカクテルである。

 右の赤いラインの入ったボトルが30度(880円)、中央のボトルが40度(1120円)と2種類ある。

 明治の発売当初は、その度数の強さ(当時は45度)で口の中がしびれる状態と、電気でしびれるイメージが合致し、ハイカラな飲み物としてかなりな人気だったらしい。是非お試しを・・・。 

 
   雷門が見えてきた。今日はかなり雪が降っているのだが、雷門周辺は観光客で一杯である。
 おおっ!この大雪の中、浅草名物「時代屋の観光人力車」が活躍している!   
 

 メチャ楽しそう〜!乗ってる人は満面の笑み。引くほうも雪で気合が入り気迫十分の走りである。

 ちなみに2人乗りで、雷門を基点に、30分コース1人5000円。60分コース1人9000円などのメニューで営業している。一度は乗ってみたいもの・・・。

 それにしても「雷門」は人気だ。大雪の降る中でもこの人だかりである。  
   ほれ、このとおり・・・。流石、東京有数の観光名所で・・・ある。
 仲見世もこのとおり、大雪でも関係なし・・・。さて、「ちんや」は雷門の向かってスグ左隣のハズだが・・・。今回も開店時間の11:30分に店の前で待ち合わせである。  

 とは〜・・・、ア・レ・カ・・・。中央の茶色いビルが「ちんや」である。新世界菜館に引き続き、立派なお店だ。
 肉売り場があった。入ってみよ〜っト・・・。  
   どひゃ〜ん!100g:4.100円のお肉。スゴイ霜降りである。とてもグレードの高いお肉屋さんであった。
 「ちんや亭」というのもB1に併設されており、こちらは本店よりお手軽に「ちんや」の味を楽しむことができる。すき焼定食:3000円、サーロイン定食:3000円などが主なメニュー。達人は1人で来られた時はよくコチラを利用されるそうだ。

   お待たせしました。コチラが正面玄関です。11:30分、シャッターが上がると同時に1番手で入店である。達人には「コダワリ」がある。それは最初のお店は「必ずその日1番で入店する」コト。う〜む、コメントできん・・・。
 玄関をくぐり、靴を預けると仲居さんが登場。親切に部屋に案内してくれる。伝統のサービスが行き届き、客としてはとても幸せな気分になれる。  
   通路内の照明はこのような瀟洒な感じの「間接照明」である。日本の照明の基本は「直接照明」であるから、文明開化の明治期から大正期にかけては、大陸の文化様式をたくさん取り入れていたことが感じられる。
 通路に端々にはこのような「生け花」が飾ってある。和洋折衷の特異な空間が演出されている。

 通路には、このような「開化絵」が多数飾られている。「開化絵」とは、文明開化の文物を描いた浮世絵のコトである。

 幕末から明治20年代にかけて盛んに出版された。写真の無かったこの時代、時事性の高いメディアとして人々から愛好されていたのである。

 そんな通路を仲居さんに案内されながら進むと、本日のお食事処に到着。部屋は、個室(和室・洋室)と大広間、宴会場の3タイプがある。今回は個室の洋室に案内された。

 予約をすると、個室に入るには1人5,500円以上のプランをオーダーしなければならない。本日は予約なしで来たのでオーダーの制限なしで個室に案内してもらった。ラッキー!

やはり、達人と来ると「福」がありますな〜・・・。

 お部屋の名前は「並木」。扉も格調高い。さあっ、いざ入室!
 見よ!この雰囲気!大正ロマンを感じさせる瀟洒な洋室である。これは素晴らしい!こんな雰囲気の中で食事ができるなんて「し・あ・わ・せ」。いいでしょ〜!

   この電話、飾り物ではありません。j実際にこの電話を使用して注文するのだ。かけて見ると呼び出し音が廊下の先で聞こえる・・・。ねっ!粋でしょ〜。

 さあっ、すき焼スタート!ちんや特製のすき焼鍋が出てきた。 すき焼の作り方は関東と関西ではおおいに違う。

 関東は、明治に流行した牛鍋がベースで、だし汁に醤油、砂糖、みりん、酒などの調味料を混ぜた「割下」を用意し、割下の中で牛肉を煮る。

 関西は、牛肉を焼く料理で、肉が焼けたところで砂糖をのせるかまぶし、醤油を直接加えて味付けする。

 
   マズは具材が運ばれてきた。すき焼では具材のことを「ザク」という。、長葱、春菊、焼き豆腐、白滝、椎茸、麩、などがたっぷり盛られて登場である。

 続いて「お肉」。うは〜、見事な「霜降り」だ!おいしそ〜!これで3人前:375g。ボリュームも十分である。

 日本で牛肉が食べられるようになったのは明治維新以降である。長年仏教の戒律により「肉を食べる」ことは忌み嫌われてきたが、文明開化期に、福沢諭吉らが食肉を大いに勧めるキャンペーンを張り、慶応義塾の学生達は盛んに牛鍋屋に通ったそうである。

 
   そしてプリプリの玉子!これはまた素晴らしい玉子である。ということは・・・。試してみよう!
 やはり・・・。爪楊枝を刺しても見事に立つ。10本以上刺しても立つだろう。これは質の良い玉子の条件である。イイゾ〜!  
   部屋係りの仲居さんが実に手際よく準備をしてくれ、最初のすき焼は仲居さんが作ってくれる。長葱を鍋に敷き、香りを立てると共に、ラードを手際よく塗る。
 次の瞬間、見事に薄切りされた霜降り肉が手際よく入れられてゆく。うほ〜イ、行け行け〜!  
   すかさず、「ちんや」特製のそして、秘伝の「割下」が投入される。これが「ちんや・すき焼」の美味しさの「源」である。
  そして、上質の肉を、たっぷり入れた秘伝の割下でグツグツと煮てゆく。美味しそ〜!たまらない肉汁の香り、匂いが漂う・・・。う〜っ、思わず涎がでてしまうゼ。
 

 このあと、自分達の好みでザクやお肉を足して食べる。うお〜、できてきたぞ!さあっ、いよいよ食べよ〜っ!

 ちんやのすき焼は純東京風で、明治時代の「牛鍋屋」がベース。決してお肉を焼くことはない。浅草にはもう一軒、すき焼の名店「浅草今半本店」があるが、こちらは「肉を焼くように煮る」そうで、純粋に煮るワケではないらしい。

 よ〜し、煮詰まってきた!今だ!

 
   お肉をお皿に取り、絶品玉子を溶き投入〜!ヒヒヒッ・・・。
 くはっ〜!  お・い・し・そ・う。  
   いだだきま〜す! まさに、とろけるような美味しさ!「し・あ・わ・せ」
 牛肉の味がしみこんだ割下を、たっぷり吸い込んだ「焼き豆腐」も旨いよ〜!エビスビールがガンガンすすむ。お肉もガンガン無くなってゆく。1人前追加〜・・・。  

 あっという間に完食!・・・となりました。満足、満足、大満足!ご・ち・そ・う・さ・ま。

 今回は後にハシゴがあるので「ご飯」は食べなかったが、この残った「お汁」を玉子と絡めてご飯に掛けて掻き込んだら最高であろう。

 

食後の感想

 マズ一番の感想は、「このお店に外国人を連れて来てあげた〜い。すっご〜く喜ぶだろうな〜!」と感じたこと。

 アメリカでは「SUKIYAKI」が1963年に大ヒットした。ユキチが5歳の時である。といってもコレは歌の話。あの坂本九の「上を向いて歩こう」がアメリカでは「SUKIYAKI」という曲名で大ヒットしたのである。

 ナゼ「SUKIYAKI」になったのかって・・・。それは発売元のレコード会社の社長が日本で食べたスキヤキが旨かったからという。1963年の時点でアメリカでは「スキヤキ」という固有名詞は全米中の知れ渡ったのである。余談だが1963年6月15日は記念すべき日で、「SUKIYAKI」が全米ヒットチャート1位になった日なのである。後にも先にも全米ヒットチャート1位になった日本発の歌はナイ。

 館内は日本の文明開化時代の洋館の雰囲気が見事に残されている。この雰囲気の中で、外人さんにも「高級」「美味しい」「ジャパニーズ」ということで大いに認知されている「すき焼」を味わっていただく。しかも、「ちんや」秘伝の味で・・・。きっと一生の思い出になるハズだ。商社マンなどの世界を相手に活躍している皆さん!是非利用されると良いですよ!お勧めです。


 

 

 

 

 

 

 

== Sukiyaki C H I N Y A == すき焼ちんや 浅草開花絵ギャラリーより

 

 次は「味」であるが、ユキチは濃い目の味が好きである。濃い目に作られた「ちんや」秘伝の「割下」はスゴイ!当然かなり甘〜いのだが、なんとも言えない上品な「甘さ」なのである。それにやわらか〜い「ちんや」一流の牛肉の味が調和して、もう素晴らしく、たまらなく美味しい!・・・と感じた。

 さすが、「ちんや」! この一言に尽きた。
日本の老舗秘伝の「すき焼」の味を始めて食することができ、また文明開化の香を楽しむことができ、そして浅草をさらにより深く知ることができ、最高であった。

 あ〜…、それにしても、美味しかった・・・。

 達人ありがとうございます!

■今回食したもの
     すき焼「椿」   1人前           3.200円

     内容
      ・お肉(赤身125g)   1,800円
      ・ざく              750円
      ・玉子             100円
      
    ※ 他に2ランクあり。すき焼「楓」お肉が125g 3.600円、すき焼「桐」お肉が125g 6.300円、
      の2つのアップ・グレードプランがあります。

       3人で1人前ずつ頼み、肉一皿(125g)、玉子2個追加。
      エビスビール(750円)×7本

 高級食材ですが、飲んで食べて、上記内容で1人しめて5.560円なり。
このお値段で老舗の「すき焼」の味が十分に楽しめます。肉の量も十分で、量・質・価格・サービスともに十二分に満足のいく内容でした。

是非、皆さんも行ってみてくださいネ!

 

番 外 編  

浅草無双 煮込み屋 正ちゃん ハシゴ1軒目

 甘〜く、とろけるような旨さを目いっぱい堪能した後は、腹減らしに第1回に引き続き、銭湯「蛇骨湯」へGO!約1時間、名物の黒湯にゆ〜っくりつかる。あ〜、極楽、極楽!

 そして本日のハシゴ1軒目はどこに・・・。達人の浅草のレパートリーは非常にたくさんある。選り取り見取りなのだが、どれも良さそうで絞りきれない。迷うな〜・・・。

 とその時、「正ちゃんに行こう!ここの牛煮込みは素晴らしいよ!」と達人。これで決まった!連続「牛」攻撃である。高級な味と超庶民的な味を比べようというナカナカの企画!浅草ならではの企画でもある。

 さっ、正ちゃんにGO!


 あ〜、いい湯だった・・・。もう雪はやみ雨になっている。すしや通りなど浅草の代表的なストリートを達人に案内してもらいながら「正ちゃん」へと向かう。

 あった!あれか・・・。「浅草無双、牛煮込み 正ちゃん」の電飾がナカナカ粋である。浅草の裏通り、ウインズの場外馬券売り場の近くの飲み屋街にお店はアル。土日は、競馬新聞を超熟読しているおじさんたちで一杯の場所だ。

 ディープな場所にある「オープンテラス」。こんな表現が正ちゃんにはぴったり。達人のお話によると、通常はお店の外にテーブル席がズラリ、パラソルがドオ〜ン。非常に健康的なオープンテラスの煮込み屋さんだそうだ。

 今日は雪等天候がスグレズ店内のカウンターへ・・・。実は達人も店内のカウンターは初めてであった。

 見よ!この豪快な牛煮込み鍋。ここの名物は「牛煮込み(400円)」。ここからすくって提供してくれる。この大鍋で、牛スジ肉、玉葱、豆腐、蒟蒻をグツグツ煮込んでいるのだ。

 いわゆる下町煮込みデフォルトのモツではない。本格的な牛のスジ肉の煮込みで、モツ煮とはマッタクの別物である。

 
 こちらがその牛煮込み(400円)ナリ。ケッコウなボリューム。これを丼のご飯に盛った「牛めし」は500円である。甘ったる〜い匂い、う〜む、これで美味しくない筈はナイ・・・。
 熱々の煮込みを、「いただきま〜っす!」 お〜う、・・・。味付けは甘辛。牛スジはとろっと柔らかく口の中で溶ける。これはすき焼風というか「牛皿」に近い印象だ。唐辛子をふりかけて食べるとコレが又GOOD!旨い!  
   寒いので日本酒だ〜!このように目一杯、なみなみと注いでくれる。ぷは〜・・・、酒も旨い!
 他にも、様々な煮込みがある。これはダイコンと鮭の荒煮。も〜、大きなダイコンに味が染み渡り、トロトロの味わい。これもいいよ!  
   これも逸品だった。にしんの荒煮。牛煮込みの味を中和してくれて食が進む、進む・・・。

 定番の「肉ジャガ」。これもおお〜きなジャガイモがトロトロであった。どれもこれも目一杯煮込んである。さすが浅草無双・・・である。おおいに気に入った。大満足で店内のカンンター席を離れた。

 達人ありがとうございます。

 

 

秋田郷土料理 あらまさ ハシゴ2軒目

 正ちゃんで、下町の大衆食堂の味を楽しんだ後は「カラオケ」へ、約2時間思い切り歌い、お腹を減らすと同時に、大きな声を出して「ストレス」解消!・・・である。

 さっ、今日のハシゴの2軒目は? 店を出た時、達人の一言で決まった・・・。

 

 達人曰く、「きりたんぽ、食べに行こうか?・・・」  ということで、3軒目は秋田郷土料理の名店「浅草・あらまさ」へと連れて行っていただいた。秋田の銘酒「新政(あらまさ)」の名を冠したお店である。 
 きりたんぽ鍋を注文。1〜2人前2.360円なり!秋田郷土料理伝統の鍋に具がいっぱい入って出てきた。使い古したガスコンロがシブイね!

 

 鶏ガラのダシがしっかり効いた絶妙なお汁。本日最後の「和風汁」はまた乙なもの。鶏肉(比内鳥?)も良く煮えておいしいッス。
 「きりたんぽ」もコシが強く、グツグツ煮ても形が崩れず最高でした。お汁をたっぷり吸っておいしかった・・・。  
   もちろん、お酒は「新政」。常温でいただいた。秋田郷土料理にはぴったりの酒である。今回はこれで終わり。達人ありがとうございました。

 

■ 正ちゃん(しょうちゃん)
   台東区浅草2-7-13
   tel 03-3841-3673
  営業時間
   平日/土 11:00〜24:00
   日/祭  11:00〜24:00
   ※情報が錯そうしており確認
     ください。
  定休日 月・火

■ あらまさ
   台東区西浅草2-12-8
   tel 03-3844-4008
  営業時間
   平日/土 17:00〜1:00
   日/祭  16:30〜24:00
  定休日 年中無休(12/31 を除く)