2013 北アルプス 七倉〜ブナ立尾根〜烏帽子〜南沢岳〜不動岳〜船窪岳〜北葛岳〜蓮華岳〜針ノ木岳〜扇沢(1泊2日で北アのマイナールートをゆく)

2013の快速登山第二弾は、北アルプスで最後に残ってしまったマイナールート、裏銀座の延長線上である烏帽子岳から針ノ木岳までの縦走である。

 自分流に言うと、北アルプスには2つの主脈がある。それぞれの起点は同じ上高地で、穂高連峰、槍ケ岳を越え西鎌から双六、三俣蓮華岳までは同ルート。主脈@は、三俣蓮華岳から黒部五郎岳、薬師岳を越えて五色が原を通過し立山連峰に入り剣岳に至るルート。主脈Aは、三俣蓮華岳から鷲羽岳、水晶岳を越えて裏銀座に入り、烏帽子岳、針ノ木岳を踏破し爺ケ岳から後立山連峰に入って白馬岳にいたる長大なルート。

 2004年より開始した快速登山ではこの2つの主脈の尾根はほとんど踏破。残ったのは「烏帽子小屋から針ノ木小屋までのルート」と「五竜山荘から唐松岳頂上山荘までのルート」の2つだけ

 よ〜し!この夏こそは北アルプス屈指のマイナールート、烏帽子小屋〜針ノ木小屋間を踏破しよう!そして烏帽子岳(200名山)と蓮華岳(300名山)を一気に初登頂しよう!

 ということで、前夜、新宿から夜行バスに乗って早朝七倉に入り、七倉ダムまでラン。北アルプス三大急登のブナ立て尾根を登り烏帽子小屋へ。針ノ木岳への縦走路に突入し、烏帽子岳を登頂後、北アルプスで最も崩壊が進む山域を縦走してランプの小屋で有名な船窪小屋に泊。翌日、蓮華岳を登頂し、ついでに針ノ木岳も登頂して大雪渓を扇沢へ下る1泊2日の快速登山を実行した。

さ〜て、どうなりましたでしょうか!どうぞお楽しみください!

7月27日(土)
七倉〜ダム〜ブナ立て尾根経由:烏帽子小屋〜烏帽子岳〜南沢岳〜不動岳〜船窪小屋

Map1

■記録 (  )内のタイムは昭文社:山と高原地図 標準コースタイム

七倉
50:36 (2:00:00)
高瀬ダム 50:36
20:44(0:40:00)
ブナ立尾根取付  1:11:20
1:39:54 (3:50:00)
     2209m三角点 2:51:14
47:09(1:30:00)
烏帽子小屋 3:38:23 (休憩30:59) 烏帽子小屋 4:09:22
18:42(0:30:00)
烏帽子取付 4:28:04
15:18(0:15:00)
烏帽子岳(2628m)4:43:22 (休憩 12:27) 烏帽子岳 4:55:49
09:43(0:10:00)
烏帽子取付 5:05:32
1:58:53(2:30:00)
不動岳 7:04:25(休憩13:26)不動岳 7:17:51
2:26:26(3:00:00)
船窪乗越 9:44:17
49:38(1:00:00)
船窪小屋 10:33:55

  昭文社:山と高原地図 標準コースタイム:15:25:00 (標準タイムの68.4%)

夜行バスは午前4時には七倉の山荘前に到着した。まだ暗闇に包まれている。

月明かり・・・。

支度を整えていると、東の空がだいぶ明るくなってきた。天気はよさそうだ。

出発準備完了!午前4時26分に七倉をスタートした。

マズは高瀬ダムまではロード・ランである。ゲートを入ってゆく。

ゲートを入ってすぐの橋の下は急峻な沢からの激流が流れている・・・。

高瀬ダムまでのロードには4つのトンネルがある。最初の山の神トンネルは約1kも長さがあり明かりもなく真っ暗。ヘッドライトを照らして進むがやはりトンネル内は薄気味悪い。次の神沢トンネルからはトンネル内に明かりが灯っており安心だ。

ゆるやかな登りを走ってゆくと、やっとあたりは明るくなった。

走ること約40分、最後の源五郎沢トンネルを抜けると間の前に高瀬ダムが現れた。

東京電力が管理する発電用ダムで、岩石や土砂を積み上げて建設するロックフィルダムとしては日本第二位の高さ(176m)を誇る巨大ダムである。

なので、登るのも大変(汗)。直登はできないのでダムの端から端へ伸びるロードをジグザグに登ってゆく。

やはり岩の上を直登してショート・カットするやつがいるんだな・・・。

ということで、七倉から約50分で高瀬ダムの上に到着。ここが湯俣温泉と烏帽子方面の分岐になっている。

これから向かう烏帽子方面。高瀬ダム越しに、烏帽子岳らしきピークから南沢岳へと続く稜線が良く見えた。

ダムの上を渡ってゆくとトンネルがある。不動沢トンネルである。ここを通過して登山道に入ってゆく・・・。

しばらく行くと・・・

不動沢に架かる大吊り橋。けっこう長いデス!

吊り橋の上から不動沢を望む。この山塊は大町市(長野)側が大きくガレており、信州側が大崩落した荒れた山々が連なっているのだ。

吊り橋を渡り、河原に降りて濁沢沿いを遡りながら進む。すると不動沢の滝が見えてくる。

さらに濁沢を渡って・・・

本格的なトレイルになってくると、いよいよブナ立て尾根の取付点が近い。

来た〜っ!裏銀座の登山口、北アルプス三大急登のひとつ「ブナ立て尾根」取付。下りでは通過しているが登りは初めてである。

ここから烏帽子小屋までは標高差1214m、コースタイムで5時間20分の急登である。このように区間が12に分かれており、自分が今どのくらい進んだかわかるようになっている。

さあっ!
取付地点のNO.12からスタートだ!

いきなり階段状の急な登りから始まり、スグに工事現場で使われているような足場で組まれた階段を登るようになる。

最初はこんなんバッカリ・・・。

急登につぐ急登。標高差はたいしたことないが、角度的には流石に三大急登と呼ばれることだけはある。

ブナの森に陽光が差し込んで来た・・・。

急登でしんどいのだが、その名がしめす通り、このルートはブナ林がとても綺麗な登山道である。

実に美しいブナの森が続き癒される。ブナの森を観賞しながらたんたんと登れば、急登も「なんのその」である。

8番通過・・・。

ここで視界が開け、南沢岳と不動岳の鞍部の南沢乗越付近が見えた。それにしても凄いガレ方だ・・・。

6番通過。中間点である。

南沢岳(2625m)の山頂部が見える。(望遠撮影)

振り返ると、高瀬ダム湖の向こうに左から山頂がゴツゴツした唐沢岳(2632m)、その中央奥にのっぺりした山頂の餓鬼岳(2647m)。餓鬼岳から右に伸びる稜線上に剣吊のゴツゴツした岩塔が見える・・・。

4番に到達。

ここに2209mの三角点がある。取付からここまでのコースタイムが3時間50分だが、1時間40分で到達できた。マズマズの入りである。あと高度約350m稼げば烏帽子小屋だ。

ここで目指す烏帽子岳(2628m)の山頂部が見えた。(望遠撮影)

右のピークが不動岳であろうか・・・。

急登も一段落し、緩やかな登りも混じるようになってきた。

尾根の左手に三ツ岳(2845m)も見えてきた。もう小屋は近い・・・。

お〜っと、開けてきた・・・。

烏帽子小屋に到着!しかし、到着するやいなや雷鳴が轟き、豪雨となった。ギリギリセーフ!

雷鳴が轟く中、豪雨がしばらく降りつづける。小屋の看板から雨水がしたたり落ちている。しばらく軒下で待機。聞けば上高地付近に大きな雷雲があるそうだ。

約20分ほどでやっと雨も上がった。薄日が差し込み始め、小屋の前の広場からニセ烏帽子が見えてきた。

よ〜し、出発だ!
今日は上空に寒気が入り、非常に不安定な状況。雷雲がいたるところで発生しやすいので注意するように小屋の人からアドバイスを受ける。これはもう「運」にかけるしかない。これから向かう山域で発生しないことを祈ろう。

小屋から少し登ると、裏銀座の尾根の向こうに三ツ岳(2845m)。主稜線はガスッてみえない。

マズは花崗岩のザラザラした砂礫を踏みしめてニセ烏帽子岳(2605m)へ。

ニセ烏帽子山頂へ着くと、目の前の雲が切れて、いきなり今回のメインターゲットが現れた!

烏帽子岳(2628m)。岩塊を束ねたような異様な山頂部が目を引く。

山頂への分岐。ここから山頂へピストンする。

山頂部の岩塔が目の前に迫ってくる・・・。

直下まで接近すると、右手に回り込むようにトレイルが伸びてゆく。

さっ、いよいよ取付き接近。ずいぶん丸っこい岩になったが、迫力満点の岩だ。

あそこが取り付きか・・・。

取付はマズはクサリ場。一枚岩をよじ登る。先ほど降った雨で濡れておりスベリやすいので慎重に通過する。

こんどはトラバース!

うひょひょ〜っ!
高度感抜群だ〜っ!

山頂部の南側、「烏帽子田園」といわれる池塘が点在する草原が遙か下に広がっている。一般には「四十八池」という名称で知られている。

登ってきたトレイルもあんなに下になった・・・。

岩を乗り越えると山頂部にでた!あれが山頂か!

烏帽子岳(2628m)山頂、日本200名山である。岩にへばりつくようにして祝:初登頂!(笑)

山頂よりニセ烏帽子方面・・・

山頂より高瀬ダム。実に深い谷だ。残念ながらガスに包まれて、山頂から見えたのはこれだけ。

山頂で約12分休憩し、速攻で下って分岐まで戻ってきた。上空には青空が!いいぞ〜っ!「四十八池」の通過が今回の最大の楽しみ。なんとしても晴れの中で通過してみたい。

この辺りは燕岳同様「コマクサ」の群落がある。あまり人が入らない山域なので「コマクサ」にとっては幸せだろう。

花崗岩の砂礫のトレイルの脇には様々な高山植物が咲いており、実に気持ちの良い稜線散歩が楽しめる。

お〜、南沢岳と不動岳が正面に見えてきた!いよいよこのトレイルでもっとも期待している「烏帽子田園」、通称「四十八池」へ突入だ!

早くも一つ目の池がでてきた。

お〜・・・。

来た〜っ!
憧れの「四十八池」。予想通り北アルプス屈指のアルプス庭園だ!

すすむほどに池が出てくる。その淵を回り込みながら進む。

振り返れば烏帽子・・・。

さらに進むと前方がなお開けてきた。

いや〜、
最高に気持ちイイ!

まさに雲上の楽園の極楽のランである。

ヤッホーっ!

南斜面一面にお花畑が広がっている。実に美しい庭園だ。お花畑越しには烏帽子、ニセ烏帽子のピークが見える。

ここが一番大きな池かな・・・。

あっという間に「四十八池」を抜けた。山の神様本当にありがとう!最高のランが楽しめました。事実、烏帽子岳から四十八池、そして南沢岳までの間しか晴れてくれなかったのである。

さて、雪渓を南沢岳へと向かいます。

南沢岳への登りも花崗岩がところどころ露出した砂礫のトレイルをゆく。

この斜面にもコマクサの群落。

振り返れば烏帽子岳。奥には裏銀座縦走路の三ツ岳も見える。

左手奥には赤牛岳(2864m)。山頂から黒くのびる長大な読売新道が見事だ。

さらに左手前方下には黒部湖。ちょうど湖の末端、上ノ廊下と東沢谷の分岐のところと思われる。あの少し奥に奥黒部ヒュッテがあるはずだ・・・。

南沢岳の山頂部が現れた!もうすこしだ。

花崗岩のモニュメント・・・。

高山植物・・・。

素晴らしいまっ白な天空のトレイルを走る!もう最高!

南沢岳(2625m)山頂。山頂からは360度の展望が広がる。

南東には今日越えてきた高瀬ダムを挟んで、左手前に唐沢岳(2632m)のとんがったピーク。その奥に剣吊(2644m)から餓鬼岳(2647m)へのギザギザの稜線が見える。

ほぼ真東には薬師岳(2926m)。山頂部の3つ大きなカールが良く見える。実に大きな山だ。(望遠撮影)

南奥には水晶岳(2986m)。別名:黒岳と呼ばれるが、ここからは山頂部がまさに黒く見える。(超望遠撮影)

南西には東沢谷の深い谷を挟んで赤牛岳(2864m)。

そして北東にはこれから向かう不動岳(2595m)。不動沢のガレが凄い!

南沢岳山頂では写真を撮ったのみで通過。いよいよ信州側が大きく崩壊している北アルプス屈指のマイナートレイルに突入である。他の登山者にもほとんど合わないだろう・・・。まずは不動岳へGO!大ガレが近づいてくる。

痩せ尾根の右サイドはこのとおりの奈落の底。滑落しようものなら底まで叩き落される。

左手前方には明日登頂する針ノ木岳(2821m)、蓮華岳(2799m)がガスの中から現れた。中央のコルが北アルプスで一番、日本で二番目の高い針ノ木峠(2536m)である。

不動沢に切れ落ちる大ガレの脇を登ってゆく。

大ガレを越えると不動岳の山頂部が見えてきた。

右手には遙か下に高瀬湖。湖から立ち上がる正面の山頂がゴツゴツした山は北燕岳から燕岳である。

不動岳直下の登り。

この登りで烏帽子小屋から来て初めての登山者とすれ違う。実に静かな山域だ。降りてゆく登山者を振り返ると南沢岳までのトレイルがよく見えた。

不動岳(2595m)山頂。

山頂からは踏み越えてきた烏帽子岳から南沢岳の稜線が見渡せた。奥には水晶岳から赤牛岳の稜線が見える。

北にはこれから進む船窪岳への稜線。ここも信州側がガレにガレており凶悪な顔を見せている。奥には針ノ木岳と蓮華岳が鎮座している。

山頂で約13分休んで船窪岳へのヤセ尾根に突入だ!

基本的に右サイドの信州側はガレてスッパリ。滑落したらアウト!

いや〜、この稜線は大変だ・・・。

うひょ、ひょ〜!

うひょ、ひょ、ひょ、ひょ〜!・・・。

ヤセ尾根にも華(花)はある。

北側は雲が湧いていて視界不良。が、突如、雲が取れて針ノ木岳が目の前に現れた。いい山だ!

ヤセ尾根は続く・・・

左手前方の山は立山周辺。雲が覆い雷鳴が聞こえてくる。こっちに来るなよ〜。

行け行け〜っ!

ここも危ね〜・・・。

あれが船窪岳か!直下までたどり着いたようである。

山頂直下の登りに入る。あの岩の上が山頂か・・・。

船窪岳(2459m)山頂。

山頂からの展望は東側しか効かない。今日の宿泊地の七倉岳周辺とその左に山頂部に雲をまとった北葛岳が見える。しかし、どこまでもガレてるな・・・。

山頂を通過し少し行くと高瀬ダムから始まる湖全景が遙か下に見える。

あれが船窪乗越か・・・。遙か下にコルが見える。

この下りはかなり急峻。やっとコルが近づいてきた。しかしこの鞍部(コル)は船窪乗越ではなかった。

あれか!この鞍部も船窪乗越ではなかった。地図からすると山頂から下るとスグにでてきそうなのだが。じらされる・・・。

うひゃ〜!
なんか雲上のアスレチックコースになってきた。

このあたりは緊張するヤセ尾根の連続。

ここも・・・。

迫力あります!
まさにアスレティック・アドベンチャートレイルです!

3段ハシゴ・・・。いったい船窪乗越はどこにあるんだ(汗)。

すると・・・、あれか!前方に黄色い道標が・・・。

船窪乗越にやっとこさ到着。今日のトレイルでは船窪岳からこの乗越の間が一番危険であった。不動岳からこの乗越まで実に2時間26分かかってしまった。

この乗越も道標のすぐ脇の右サイドは鋭く切れ落ちている(汗)。

さっ、あとは七倉岳の山腹にある船窪小屋まで行けば今日は終了。相変わらず右サイドが大きく崩壊したトレイルをゆく。

ず〜っと、こんなんばっかし・・・。

一気に高度を稼ぎ、振り返ると船窪岳が左奥に見える。ガレた山肌が左に大きく落ち込んでいるところが船窪乗越だ。

さらに進むとダケカンバがたくさん出てきた・・・。

ここはダケカンバの森か・・・。

お〜、素晴らしい・・・。
やっと森のトレイルの中に入り、ホッとする。

すると七倉岳の山頂部が遂に姿を現した・・・。

傾斜が緩くなったところで道標。もうすぐだ。

森林限界を抜けたところに主稜線と小屋との分岐。あとワズカ・・・。

鐘の音が聞こえてくる。誰かが鐘を鳴らしてる。
お〜っ、小屋が見えた!

眼下には七倉ダムとダム湖が見えてきた・・・。

船窪小屋に到着、10時間33分に渡る戦いが終わった。緊張するトレイルが続いたせいかバテバテ。飯を食ってバタンキュ〜となりました。小屋は団体さんが何組も入っていて満杯、とても静かな山小屋ではなかったです。船窪小屋、人気あるんですね(驚)。

7月28日(日)
船窪小屋〜北葛岳〜蓮華岳〜針ノ木岳〜針ノ木大雪渓経由:扇沢

Map2

■記録 (  )内のタイムは昭文社:山と高原地図 標準コースタイム

船窪小屋
1:31:39 (2:00:00)
北葛岳(2551m)1:31:39(休憩15:02)北葛岳 1:46:41
1:45:23(3:00:00)
蓮華岳(2799m)3:32:04(休憩 3:34)蓮華岳 3:35:38
31:57 (0:40:00)
針ノ木峠 4:07:35
41:42(1:00:00)
針ノ木岳(2821m)4:49:17 (休憩18:05) 針ノ木岳 5:07:22
25:24(0:30:00)
針ノ木峠 5:32:46(休憩6:21)針ノ木峠 5:39:07
1:24:02(2:00:00)
大沢小屋 7:03:09 (休憩 3:27) 大沢小屋 7:06:36
35:54(1:00:00)
扇沢 7:42:30

  昭文社:山と高原地図 標準コースタイム:10:10:00 (標準タイムの75.7%)

2日目、午前3時起床、一晩中灯るランプの下で一人出発準備を行う。この小屋では水の配給は一切ないので、前日に2.5リットルほど満タンにしておいた。ちなにに500ミリリットル:100円。

準備完了!午前3時37分に真っ暗闇の中出発。

天候はあまりよろしくない。風もでている。雲が張り出して星がまったく見えない。昨日より今日のほうが天候はいいと思っていたのだが。すぐに七倉岳(2509m)山頂に到着。

山頂からは大町市の明かりが見えた・・・。

七倉岳からの下りはカナリの痩せ尾根で両サイドがスッパリ切れている個所が続出。すこし明るくなってきたが、まだ視界が良く効かないので慎重に進む。通過には時間がかかる。

痩せ尾根の下降中に明るくなり、目の前に北葛岳が現れた。右下のコルが七倉乗越である。

北葛岳(2551m)山頂、視界なし。途中小雨も降りだしてヤセ尾根の岩が滑って危険だったので、七倉岳から乗越、そしてこの北葛岳までは写真も撮らずにひたすら慎重に進んできた。ここで岩場にもぐり込み風をさけて朝飯。

約15分休憩し出発。ガスの中、こんどは蓮華岳との最低コル:北葛乗越へと下降を開始する。高度約300mの大下降の開始である。晴れていれば目の前に蓮華岳がど〜んと見えるだろうに。

トレイルに雷鳥発見!ということは、今日の天候はよろしくない可能性が高いということだ。残念・・・。

この下りはヤセ尾根ではなく快適な下り。飛ばせます。

一瞬、左手のガスが切れて視界が開けた。針ノ木谷が黒部湖に向かって伸びてゆくのが見える。正面の山は五色ケ原あたりか・・・。

快調に下ってゆくと前方に急な落ち込みが見えてきた。あの下が北葛乗越だな。

さらに下ると正面にごっつい岩場が迫ってくる。前方の雲をかぶっている大きな山が蓮華岳。左下にちらっと見えるコルが北葛乗越。乗越から蓮華岳山頂までは高度524mの大登り、北アルプスのトレイルではかなり大きなギャップである。下りは通称「蓮華の大下り」と呼ばれている。ここからの蓮華岳の眺めはカナリ迫力あるだろうなあ。

東の空からはときより陽光が漏れたりしているのだが・・・。

乗越に降りてきた。北葛岳からの高度276mの下りが終了。正面には前後2つの大きな岩壁が立ちふさがる。

お〜っ、いきなりド迫力の岩の直登。角度も垂直に近いし距離もある。これってあまり知られてないけど、一般ルートとしては剣の蟹のタテバイに匹敵する岩登りじゃないかな〜。

上部に抜けてもまだ上があった。楽しませてくれます(喜)。

岩の直登が終わったところにテラスがあり、そこから乗越を振り返る。一気に高度を稼いだことがワカル。

そしてテラスからは2番目の岩峰が立ちふさがる。あれを越えてもまだ次なる岩尾根がありそうだ。

しばらく撮影は中止してひたすら岩尾根を登る。あそこを抜ければやっと悪所は抜けそうだ。

抜けた〜っ!蓮華岳から針ノ木岳へと続くなだらかな稜線が現れた!

岩尾根を抜けると蓮華岳の山頂部が現れた。ここからは砂礫のトレイルとなりジグザクに登ってゆく。

ジリジリと山頂が近づいてくる。

山頂の東側には晴れ間も覗き、陽光が差し込んだりする。もしかしたら山頂で雲が切れるかもしれない。

砂礫と石のミックスの大斜面の登りで、今日初めて登山者とすれ違う。

このあたりにもコマクサが咲いている。

直下から登ってきたルートを振り返る。まさに「蓮華の大下り」という表現がぴったりのトレイル。下りの方がしんどいだろう。

頂上が見てきた!もう少し!

蓮華岳(2799m)山頂、初登頂である。日本300名山のひとつ。残念ながら晴れ間がでるどころか雨脚が強くなってきた。登頂写真を撮ってスグに退散。

針ノ木峠までのならだかで広大なトレイルを飛ばす。晴れていれば目の前に針ノ木岳の威容が展開し、奥に立山連峰を望みながら快適な雲上のランが楽しめると期待していた箇所。実に残念!

風雨の中30分も飛ばすと、眼下に針ノ木小屋が見えた!

針ノ木峠(2536m)到着。北アルプス最高所の峠、日本でも第2位の高所にある峠である。そのままスルーして針ノ木岳へと向かう。天候が悪いのでやめておこうかと一瞬迷ったが、初志貫徹することにした。

ガスの中、山頂を目指す。

尾根に上がってきた・・・。

直下に入った。もう少し・・・。

針ノ木岳(2821m)山頂、日本200名山のひとつである。峠から41分を要してしまった。今日はまったくスピードが上がらない。北葛岳〜蓮華岳間を除けばコースタイムに近いタイムでしか進めていない。

三角を踏んでと・・・。これでこの山行で200名山を2座、300名山を1座登頂したことになる。

山頂で食糧を補給してスグに下山。あっという間に峠へ戻ってきた。小屋でトイレに行きいよいよ針ノ木雪渓に突入し本格的な下山だ。

うお〜っ!
峠から下る谷を観ると峠からスグ下から雪渓が伸びている。こんなに上から雪渓がついているとは。雪が多いのか、7月はこんなものなのか。今までは8月中旬頃しか来たことないのでビックリである。さすが北アルプス3大雪渓のひとつだけある。

はっきり言ってピンチである。なにしろ軽アイゼンもないし、しかもトレランシューズ。この上部の斜面は急なのでスリップしたら止まるまい。で、上部は夏道が出ていたのでそこを下る。しかし〜・・・。

下りながら非常に危険なコトに気が付いた。下りながら石を雪渓に落としたらどうなるか。「・・・・・」考えただけでも怖くなる。で、しかたなくジブンも雪渓に入ることにした。一歩一歩、ダブルストックを突いて絶対に滑らないよう下る。幸い、雪もけっこう腐ってゆるんでおりなんとかなりそうだ。上部の急斜面さえ抜ければ・・・。

ゆっくりと慎重に上部雪渓を下り、なんとか急峻な上部を抜けた。あの下の見た目平らなところまで到達すれば安心できる。

途中雪渓が切れて水が流れ出ていた。

やっと通常の雪渓に入る。まだここでも上部は気が抜けないが、もう大丈夫だ。
あ〜、疲れた・・・。

もうスリップしてもたいしたコトにはならないのでガンガンくだってゆく。前方からは隊列を組んだ一団が何組も登ってくる。軽アイゼン付けていれば峠まで快適な登りだろう。なにしろ涼しくて気持ちいいし、あっという間に高度が稼げるのが雪渓だ。

やっと雪渓の末端が見えた!

無事末端に到着!ストックがなかったら絶対降りられませんでした。針ノ木雪渓、なめたらあきまへん(笑)。

あとは普通のトレイル。最後は猛烈なスピードでカッ飛んで下る。目標としていたバスの時刻がギリギリだったのだ。最終区間はコースタイムの半分で下り切り、目の前が開けてきた。

扇沢の針ノ木岳登山口に到着!

出た〜っ!下界だ〜っ!
扇沢のバス・ステーションへと急ぐ。

乗車を予定していたバス発車まで10分を残し予定のルートを完走!あ〜、良かった。全体を通じて天候は良くなかったが、要所では展望も得られ、まあ充実した快速登山でした。体力、走力の衰えは否めませんが(笑)

扇沢トロリーバス・ステーション上空には晴れ間が・・・。降りると晴れてくる。よくあるコトです(笑)。今年でK四ダム完成50年だそうです。是非、皆さんもダムを見に来てください!黒部湖は涼しいですよ〜!最後までご覧くださいありがとうございました!

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過去の快速登山

2013年 南アルプス
塩見岳から南アルプス北部大縦走 鳥倉林道〜塩見〜間ノ岳〜北岳〜仙丈〜甲斐駒〜黒戸尾根〜駒ケ岳神社(2泊3日で完踏)

2013年 中央アルプス
伊那谷から中央アルプスの秀峰3座を越えて木曽谷へ 中央アルプス大縦断 駒ヶ根バスセンター〜空木岳〜南駒ケ岳〜越百山〜JR中央本線:須原駅(夜行日帰で完踏)

2012年 甲斐駒ケ岳・黒戸尾根ピストン
竹宇駒ケ岳神社〜黒戸尾根〜甲斐駒ケ岳〜黒戸尾根〜竹宇駒ケ岳神社

2012年 谷川岳ピストン
西黒尾根〜谷川岳〜天神尾根〜田尻尾根

2012年 奥多摩
深山橋(奥多摩湖畔)〜ヌカザス山〜三頭山〜御前山〜 大岳山〜御岳山(日帰で奥多摩三山をゆく)

2011年 北アルプス
中房温泉〜合戦尾根〜燕山荘〜燕岳〜東沢乗越〜東沢岳〜剣吊(ケンズリ)〜餓鬼岳〜大凧山〜白沢三股

2011年 北アルプス
上高地〜岳沢経由〜前穂〜奥穂〜涸沢〜徳澤〜徳本峠〜霞沢岳〜上高地(1泊2日で穂高を満喫)

2011年 南アルプス
光岳〜聖〜赤石〜悪沢:南アルプス南部全山縦走 赤石まで2泊3日

2010年 南アルプス
悪沢岳〜赤石岳〜聖岳〜光岳:南アルプス南部全山完登(途中敗退)2泊3日

2010年 南アルプス
広河原〜北岳〜間ノ岳〜農鳥岳〜奈良田 夜行日帰り

2010年 南アルプス
夜叉神〜鳳凰三山〜アサヨ峰〜仙丈ケ岳〜北沢峠 1泊2日

★その他は快速登山トップページをご覧ください。(完登リストもあります)